Magoの旅と音楽と

旅と音楽について書いています。

読書記

「ハッピー・リタイアメント」浅田次郎(幻冬舎文庫)

元財務官僚の樋口と元自衛官の大友の配属先は、ほとんど幽霊機関の「全国中小企業振興会」。 天下りの受け皿としてのみ存在する大義名分は・・・。 本当にありそうなお話です。 まあニュースの中でしか知らないわけですが。 もともとは機能していた機関が形…

「クジラの彼」有川浩(角川文庫)

合コンで知り合った彼は、潜水艦乗り。 浮上のタイミングでしか送信できない2か月ぶりのメールは、そっけないものだったが。 自衛隊員の恋愛が主軸の物語。 6編からなる短編集です。 とはいっても、浅田次郎作品とは、随分毛色が違います。 軍隊という特殊…

「食堂かたつむり」小川糸(ポプラ文庫)

倫子は同棲していたインド人にすべてを持ち逃げされ、失声症に。 失意のうちに故郷に帰るが、一日一組だけをもてなす食堂を始めたところ・・・。 なんでしょう、この生々しさは。 なんでしょう、この禍々しさは。 生きること。 食べること。 欲望と執着。 生…

「わくらば追慕抄」朱川湊人(角川文庫)

昭和30年代、高度成長を迎えた東京の下町。 主人公和歌子の姉には、人や物の記憶を「見る」という特殊能力があった。 シリーズ第2弾。 「わくらば日記」の続編です。 連作短編なのか、それとも長編か。 それなりに人物関係も深くなってきました。 ノスタ…

「あなたに、大切な香りの記憶はありますか?」阿川佐和子ほか(文春文庫)

三十五歳、独身の季理子。 旧友と共に、海外へ旅立つ礼司を送り出す会を催すのだが。 「香り」をテーマにした短編集、アンソロジーです。 全部で8編。 いつものとおり、作家さんのお名前を上げておきます。 石田衣良、角田光代、朱川湊人、阿川佐和子、熊谷…

「株価暴落」池井戸潤(文春文庫)

坂東はメガバンクの行員で、スーパー一風堂の審査担当。 思うように再建計画が進まない一風堂から、さらなる巨額融資の申し出があった。 そんな矢先に一風堂の店舗で連続爆破事件が発生する。 企業小説であり、推理小説でもあり、なかなか手の込んだストーリ…

「くまちゃん」角田光代(新潮文庫)

苑子は、花見で同席した男性と付き合い始めた。 彼は芸術家気取りで、奇妙な熊の絵の入った服を着ていた。 7編からなる連作短編集です。 触れ込みは「ふられ小説」。 男女がひっつき、一人がふられる。 その人の前後譚が、次の章で語られる。 そんな連綿と…

「インターセックス」帚木蓬生(集英社文庫)

評判の院長が経営する、評判のサンビーチ病院。 先進の医療で世界をリードしている、日本を代表する病院だ。 医師の秋野翔子は、手腕と先見性を買われてヘッドハンティングを受け、病院に赴任するが。 なんだか、残念です。 こんな結果になるなんて。 インタ…

「手紙」東野圭吾(文春文庫)

たった一人の肉親である兄は、強盗殺人で服役中。 直貴のチャンスはことごとく「強盗殺人犯の弟」というレッテルのために潰されていく。 重いですねぇ。 わかっていて読んだんですが。 重いテーマなのに、どんどん読み進めてしまうのは、作品の力なのでしょ…

「ぶたぶたさん」矢崎存美(光文社文庫)

執事が出迎えてくれる「執事喫茶」。 そこで出会った執事、山崎さんはちょっと変わった風貌をしていた。 桜色のぶたのぬいぐるみ。 でも、中身は心優しい中年男性、山崎さん。 ファンタジーです。 徹頭徹尾、ファンタジー。 小さなぶたのぬいぐるみが、動い…

「イニシエーション・ラブ」乾くるみ(文春文庫)

合コンで出会った、マユ。 少し不思議で、純粋で。 あ~、なんだかよくわかりませんでした。 純愛モノに見えるんだけど。 最後から二行目・・・? もうちど読みたくなる・・・? わかりません。 ぼくの読解力のなさでしょう。 でも、純愛モノは好きです。 主…

「隣の女」向田邦子(文春文庫)

サチ子は、ごく平凡な主婦。 アパートの隣の部屋に住む女と、通ってくる男の会話を聞いて・・・ 昭和55年から昭和56年にかけての作品です。 5編の小品が、文庫本には収められています。 家族関係も、恋人との関係も。 友人との関係も、会社での付き合い…

「僕は運動おんち」枡野浩一(集英社文庫)

高校生の勝は運動音痴で、あだ名は「うんちゃん」。 柔道部の宇佐田くんとは大の仲良しなのだが、彼は詩人でもあった。 20世紀末の青春群像。 元はケータイ小説だったものを、再編成して、文庫化したものです。 ケータイ小説なのに、ケータイのない時代設…

「D列車でいこう」阿川大樹(徳間文庫)

広島県下の第3セクター鉄道「山花鉄道」。 廃止の決まった、この会社を立てなおそうと立ち上がった三人組がいた。 「D列車でいこう」。 いい題名です。 「D列車」の「D」は、「Dream」の「D」。 夢列車です。 爽快な群像劇。 みんなハッピーな、心温ま…

「陽だまりの彼女」越谷オサム(新潮文庫)

仕事で偶然十年ぶりに再開した、中学の同級生、渡来真緒。 「学年有数のバカ」と罵られていた彼女は、美しいデキる女性に成長していた。 んもう、たまりません。 純愛物語。 切ない! 大好きです。 こういう作品。 オチがこれでいいのか、という疑問は残りま…

「ほのエロ記」酒井順子(角川文庫)

あんな思い出やこんな思い出。 ちょっとエロにまつわるエッセイ。 そういえば、公衆からエロはどんどん遠ざけられています。 もちろん子どもの目につかないところへ持っていくのは、賛成です。 でも、子どもが行ってはならない場所や、あんなところ、という…

「夕映え天使」浅田次郎(新潮文庫)

東京の工業地帯。 年老いた父親を抱えた中年男性が切り盛りする小さな中華料理店に、女性が現れた。 わけあり気な女性は、住み込みで働くことを希望するのだが。 「やるせない」。 こんなコトバがキーワードでしょうか。 6編からなる浅田次郎の短編集です。…

「四十一番の少年」井上ひさし(文春文庫)

児童養護施設に入所した中学生の利雄。 同室の昌吉から、毎日鋭い目を向けられるのだが。 最近、逝去されたこともあって、井上ひさし作品を書店の棚によく見かけます。 井上ひさし作品といえば、軽妙洒脱。 面白おかしい、あるいは荒唐無稽な作品のイメージ…

「せんせい。」重松清(新潮文庫)

いつも冴えないと思っていた化学の富田先生は、突然僕に相談をした。 「ギターいうたら、どれくらい練習すりゃあ弾けるようになるんか」 本気なんだ、と思った。 人生、ここまで来るうちに、いろいろな「先生」と出会いました。 中学校のバカ教師を絵に書い…

「すーちゃん」益田ミリ(幻冬舎文庫)

すーちゃんは、30代独身。 都会に出て、カフェで働き、マネージャーに恋心を抱いているのだが。 漫画です。 あまり漫画のことをこのブログで書いたことはなかったかと思います。 けっこう好きです。 漫画。 本作は、4コマのようなコマ割りの漫画です。 数え…

「約束」石田衣良(角川文庫)

カンタにとって同級生のヨウジは英雄だった。 校門の前でに現れた通り魔に、カンタをかばったヨウジは殺されて・・・。 石田衣良作品、何作か読んだことがあるのですが、こんなでしたっけ? なんともストレート。 いかにも清々しいまでの、まっとうな作品で…

「ハーモニー」伊藤計劃(ハヤカワ文庫)

21世紀後半、人類は「大災禍」と呼ばれる混乱の後、世界的に福祉社会を形成していた。 生命主義と呼ばれる思想のもと、個人の肉体も社会的リソースとして管理される対象に。 人類の調和は、築かれたユートピアは本物なのか。 すごい作品です。 綿密に描き…

「シアター!」「シアター!2」有川浩(メディアワークス文庫)

小劇団「シアターフラッグ」の主宰、春川巧は、劇団のための借金を兄の司に申し込んだ。 司の出した条件は「2年間で劇団の収益から300万円を返済しろ」というもの。 演劇、劇団って独特の世界ですよね。 ぼくはステージというものが好きなので、演劇も一…

「八日目の蝉」角田光代(中公文庫)

あの人の子どもを見るだけ、ただ見るだけのはずだった。 赤ん坊をくるむようにして抱き、私はがむしゃらに走った。 最近映画化もされた、話題作。 映画の方はまだ観ておりません。 が、小説が妹のところからやってきたので、読んでみました。 赤ん坊をさらっ…

「限りなくキョウダイに近いフウフ」小林光恵(幻冬舎文庫)

仲はいいけどセックスレスな夫婦、涼と真樹。 いわばキョウダイのような関係。 だから法的に「キョウダイになろう」と思い立った。 軽い雰囲気。 軽い流れ。 かと思えば、さにあらず。 物語が進むにつれ、どんどんヘビーに。 結局大変なんですね。 意地を張…

「親指Pの修行時代」松浦理英子(河出文庫)

ある日目覚めると、右足の親指がペニスになっていた。 ひとことでいうと、「延々とシゴきたおしたあとの、寸止め放置プレイ」。 こんなコト書いて、変な記事をのせているブログとしてチェックされないか不安です。 足の親指がペニスになっていたという20代…

「季節風 春」重松清(文春文庫)

娘の初節句に贈られた、七段飾りのお雛様。 別れの時が近づいた古びた粗末なお雛様には、わたしの幼時の記憶が染み付いているのだった。 いつの頃から、真っ向勝負が恥ずかしくなったのでしょう。 どうして、純粋なものに対して照れるのでしょう。 「クサい…

「いっぺんさん」朱川湊人(文春文庫)

いちどだけ願いを聞き入れてくれる神様がいるという。 しーちゃんといっしょに祠に向かったのだが。 ちょっと怖くて、ちょっと不思議で。 ちょっと懐かしくて、ちょっとほっこり温かい。 そんな朱川湊人の物語が、最近人気のようです。 この作品は、9編の作…

「「鉄学」概論」原武史(新潮文庫)

車窓から眺める日本近現代史 小説ではありません。 当然、ストーリーがあるわけではありません。 題名に惹かれて購入しました。 「鉄学」、つまり鉄道の学問なんですね。 でも、日本近現代史そのもの。 たしかに切り口は鉄道なんですが・・・。 政治思想史や…

「岸和田少年愚連隊」中場利一(集英社文庫)

岸和田の春木。 チュンバはケンカに明け暮れる毎日を過ごしていた。 「シックスポケッツ・チルドレン」がよかったので、中場利一の代表作を読んでみました。 シリーズで映画化されたほどの人気作。 たしかナインティナインが出演していましたね。 こちらは観…