Magoの旅と音楽と

旅と音楽について書いています。

「八日目の蝉」角田光代(中公文庫)

 あの人の子どもを見るだけ、ただ見るだけのはずだった。
 赤ん坊をくるむようにして抱き、私はがむしゃらに走った。

 最近映画化もされた、話題作。
 映画の方はまだ観ておりません。
 が、小説が妹のところからやってきたので、読んでみました。

 赤ん坊をさらって育てる話というくらいしか予備知識はありませんでした。
 端的にいえば、誘拐話。
 同じ角田光代の作品で「キッドナップ・ツアー」という作品があります。
 こちらは、ずいぶん前に読んだことがあるのですが、お気楽!

 対して、本作はと~~~ってもヘビーです。
 重い!
 もちろん赤ん坊をさらうというのは、とても重大な犯罪なのです。

 前半が赤ん坊をさらう女性の物語。
 日記の体裁を借りて、一人称で綴られます。
 心情が吐露されます。
 明日もこの子といられますように。
 切実、緊迫。
 とにかく追い詰められていくんですね。
 そして、逃げる。

 後半は、さらわれた赤ん坊が大学生になってからのおはなし。
 普通の体裁です。
 主人公は、事件を経て破綻した家庭で育ちます。
 そして、自分が誘拐されたときにたどった道を追跡するのです。
 しかし、追跡するのは、自分のたどった道だけではなく・・・。
 いえ、触れますまい。

 あぁ。
 子どもは、「2歳までに親孝行を終えている」なんていいますよね。
 ほわほわした赤ちゃんの肌触り。
 ぷにぷに腕。
 舌っ足らずのしゃべり始め。
 純粋な眼。
 自分がそこにいるのが、あたりまえの態度。
 たまりません。

 赤ちゃん。
 かわいいですよね。
 よその子でも、見ているだけで、幸せですね。
 なぜか、そういう幸せを思い起こします。