読書記
潮風香る風早の街の裏通り。 明治時代からの洋館が立ち並ぶあたりにある老舗、カフェかもめ亭。 様々なお客様が語る奇譚の数々。 「コンビニたそがれ堂」のスピンオフ作品。 8編の短編が収められた連作短編集。 どの作品も優しいのは、期待通り。 ほっこり…
食品会社に勤める大山田マリモ。 売れそうにもない企画商品の開発プロジェクトに携わるうちに、会社組織に翻弄されて。 新人OLが会社の組織の中で翻弄されて苦戦します。 さほど大きくない会社のようですが、それでも派閥があったり。 女性同士のいざこざが…
泉は温泉町で暮らす女子高生。 同級生に恋焦がれながらも、東京に出ることを夢見ている。 主人公の高校時代(1995年)から2000年までを追って描いています。 主人公にとって、激動の6年間。 その間、東京に出て。 男に出会って、別れて。 悩みなが…
夫婦で楽しむ古書巡り。 でも、店をめぐるのは二人バラバラ。 ビルの6階にある古地図の店で出会った男性は・・・ 「InRed]という雑誌に連載された短篇集です。 全部で53編。 当然、どの章もかなり短い作品です。 「InRed」が女性向けファッション誌という…
30歳。 定職なし。 ネトゲ廃人。 カネがないために、女のところに転がり込むハメに。 あ~~~! もうっ! どうしてこんなヤツに女がいるんだよ! 真面目に働いて、真面目に生きて。 それでも出会いがないなんていう話、ありふれているのに。 本書、簡単に…
圭介は卒業を控えた大学生。 突然、約10か月前にもどることができるという誘いの電話を受けるのだが。 タイムスリップを題材とする作品です。 でも、タイムスリップするのは精神だけ。 心が10か月前の自分の体に入り込みます。 残った方の体がどうなるの…
芥川賞作家、東峰夫、57歳。 「大切なもの」のために捨てたもの。 学歴、故郷、月給生活、妻子・・・ ノンフィクションの形を借りた14編。 16人の人生が描き出されています。 どこまでがフィクションで、どこからがノンフィクションなのでしょう。 も…
舞台は昭和40年代の泉州田尻。 典型的な漁師町の小学校5年生、ヤンチ。 彼は一人っ子だが、オトンは飲む打つ買うが大好きで、全く働こうとせず。 オカンは愛想を尽かして家出を繰り返すのだった。 ぼくが大好きな「少年もの」です。 埃っぽくて、血と汗と…
照明コーディネーターの渡部は、派遣社員の秋葉と恋に落ちた。 渡部は妻子ある身で、不倫の深みにはまってくが。 不倫ものの物語。 「不倫する奴なんて馬鹿だと思っていた。」 こんな一文から始まります。 つまり全編不倫! んもう、絶倫。 そもそも、彼女が…
大事な探しもの、心に願ったものが手に入る不思議なコンビニ「たそがれ堂」。 薫子は小説家、30代独身。 「クリスマスの思い出」についてのエッセイを依頼される。 思いを巡らせるのは、10年ほど前に突然音信不通になった彼のこと。 ひきこもり。 三十路…
いつも図書館で本の争奪になる女性。 たまたま帰りの電車で乗り合わせ、話すきっかけを得たが・・・。 一期一会。 袖振り合うも多生の縁。 そんなコトバが思い浮かびます。 阪急今津線の沿線で繰り広げられる物語。 初々しい恋話あり。 マナー話あり。 人情…
スタイリストの純子は、顧客のひとりに恋をした。 しかし、彼には妻子があり・・・。 純子と父親、菊次の関係性を主題においた本作。 どんな父親だって、娘が妻子ある男性と不倫関係に陥ったら嫌ですよね。 なにもわざわざ、そんな・・・と。 まあ、でも分か…
大事な探しもの、心に願ったものが手に入る不思議なコンビニ「たそがれ堂」。 古くから喫茶店を営んできた宗一郎は、長年連れ添ってきた妻と些細ないさかいを起こしていた。 壊れた時計を手に、早朝の風早の街を散歩する宗一郎は、ふしぎなコンビニに足を踏…
村内先生はそばにいてくれる。 寂しい生徒のそばに。 8編からなる連作短編集です。 各編につながりはなく、主人公もそれぞれ違います。 各編ともそれぞれ違う中学校が舞台で、つながりは村内先生という講師。 村内先生はヒーロー的に描かれています。 村内…
小学校5年生の夏。 市民プールで出会った広一は、深い傷を負った多感な少年だった。 淡い青春群像です。 時間が前後しながらの4編の連作短編集。 佳奈と進の姉弟と、広一との交流が軸です。 それぞれの視点で、緩やかな時間と心の憂いが描かれています。 …
切羽詰った不動産屋、丹羽は、競馬場で行き会った羽柴老人の臨終を看取ることになる。 羽柴老人から託された日記帳には、信じられないような戦中の混乱が描かれていた。 いわずと知れた、浅田次郎の代表作です。 いろいろな側面を持つこの作家の一面をなす、…
職場の先輩、手塚さんがおすしをご馳走してくれるという。 私は大喜びでついていった。 昭和53年3月に出版された作品です。 もう30年以上も前のお話。 文庫が今年改版されて、三十三版が手元にあります。 改版はどうやら、解説。 酒井順子さんが解説を…
子どもの手が離れた紀子は42歳、専業主婦。 不要になったピクニック用品を、ネットオークションに出品するのだが・・・。 家、家庭がテーマの短編集です。 全6編。 どれも身近な話題。 読みやすくつづられています。 ちょっと心に隙間のある女性。 うまく…
斜視を気にする主人公、京子は20歳のOL。 一人暮らしを始めたアパートから程近いところには、変わった老人、万寿子が住んでいた。 20歳のOLと78歳の老女の、奇妙な友情物語です。 暮らしてきた地盤が、まったく違う二人。 価値観も何もかもが違い…
地球に隕石が衝突する。 一部のものは、ロケットで脱出をするようだが・・・。 7編からなる、連作短編集です。 とはいっても、どれもそれほどつながりはありません。 最初のうちはつながりがあることすら明らかにされません。 7編はどれも昔話を主題に再構…
16歳の女子高生小梅。 47歳、大手化粧品会社サラリーマンのパパ。 普段はすれ違ってばかりの二人だが、事故で身体が入れ替わってしまう。 うちは代々職人で、親の代は親戚にも、まともにサラリーマンという人はいませんでした。 そんなぼくの高校生のこ…
入院しているハヅキさん。 ハヅキさんは以前に教師をしていたころの同僚で・・・。 あまり厚くもない文庫本。 解説などを含めても229ページ。 そんな本書に26編。 つまり一編一編は、とても短い作品集。 7ページ程度の小さな作品が詰まっています。 こ…
妻子がありながら、愛人関係を噂される大学教授村川融。 彼の研究室に勤める助手三崎は、彼の妻を訪ねるのだが。 なんだか、すっきりしないお話です。 村川は妻子を捨て、子連れの愛人と新たな所帯を持ちます。 これが骨子なのですが、物語の本筋ではありま…
里佳とエドは、ともに国連難民高等弁務官事務所に勤めるカップル。 二人は結婚し、理佳は二人の生活を築こうとしているのだが、価値観はどんどん乖離してしまう。 6編からなる短編集です。 「カリスマパティシエ」のアシスタントの女性。 融通の利かない大…
借金に終われる前科者、伊達秀吉。 場当たり的に子どもを誘拐してしまうのだが・・・。 次から次へと起こるイベント。 魅力的なキャラたち。 スピーディーな展開。 そして、人情。 とにかく面白く読めました。 子どもも大人も。 やくざもマフィアも。 警察官…
幼いころ、教会で育てられた理津子。 イラストレーターの彼女は、5年間一度もプライベートな友人と食事をしたことがなかった。 そんな彼女の前に、自由な男性、大西が現れるのだが。 前の記事の「バイブを買いに」とは、対極的な行動を取る女性の物語。 厳…
むぅちゃんと同棲する「わたし」。 わたしにとってのハッピーとは。 むぅちゃんはわたしに、バイブを買ってくるようにいうのだった。 バイブですか・・・。 ロリベとザブラは、常備しています。 って、そんなハナシではありませんね。 もちろん、女性に用い…
大正年間の吉原。 太夫ミノは、身請けを引き受けてくれた時次郎が暮らす街へ。 恋焦がれて足を運んだ月島で、彼女が見たものは。 たくさんの赤いちょうちんが、石造りの娼館を妖しく照らしていたのでしょうか。 そんな光景が目に浮かびました。 って、勝手な…
土曜日、夫の明彦とラブホテルに行くことにした。 恋愛の先にある夫婦の生活とは。 二人の小さな子どもをもち、子育てに奮闘。 自身は広告会社に勤めるが、夫はマイナーな映画監督。 家事に仕事に、精を出す主人公、豊子。 とってもいい奥さんです。 なんと…
高校を卒業して四半世紀。 結婚披露宴で演奏するために、かつて吹奏楽部で演奏したメンバーが集められようとしていた。 高校のときの三年間って、いろいろありますよね。 中学ほど盲目的にすごすわけでもなく。 大学ほど自由に、そして刹那的に過ごすわけで…