Magoの旅と音楽と

旅と音楽について書いています。

「むかしのはなし」三浦しをん(幻冬舎文庫)

 地球に隕石が衝突する。
 一部のものは、ロケットで脱出をするようだが・・・。

 7編からなる、連作短編集です。
 とはいっても、どれもそれほどつながりはありません。
 最初のうちはつながりがあることすら明らかにされません。

 7編はどれも昔話を主題に再構成されています。
 「ラブレス」-「かぐや姫
 「ロケットの思い出」-「花咲か爺」
 「ディスタンス」-「天女の羽衣」
 「入江は緑」-「浦島太郎」
 「たどりつくまで」-「鉢かづき
 「花」-「猿婿入り」
 「懐かしき川べりの町の物語せよ」-「桃太郎」

 直接、物語を現代風にアレンジしました、なんていう安易なつくりではありません。
 どれもが独立した1編の作品です。
 なぜか静かな雰囲気を漂わせる不思議な作品集。

 7編の作品は、すべて主人公は別人です。
 この主人公たちがなかなかいい感じ。
 「ロケットの思い出」あたりで、ぐんぐんと物語へ引き込まれます。
 「まほろ駅前・・・」のキャラたちを彷彿とさせます。

 「入江は緑」は京都府伊根町が舞台のようです。
 著者は何度も足を運ばれたのでしょうか。
 街外れには浦島太郎とゆかりがあるといわれる、浦島神社があります。
 静かな街の、静かな物語が、迫り来る壮大な仕掛けと対比していて、とても鮮やか。

 映画化しても面白いかも。
 興行成績は上がらないでしょうが。

 いい作品です。