Magoの旅と音楽と

旅と音楽について書いています。

「ハヅキさんのこと」川上弘美(講談社文庫)

 入院しているハヅキさん。
 ハヅキさんは以前に教師をしていたころの同僚で・・・。

 あまり厚くもない文庫本。
 解説などを含めても229ページ。
 そんな本書に26編。
 つまり一編一編は、とても短い作品集。
 7ページ程度の小さな作品が詰まっています。

 これは小説というのでしょうか。
 もちろん分類するとすれば小説。
 一編目からすごく引き込まれます。
 7ページで片をつけるのだから、当然。
 すぐに作者の世界に落ちていく感じが心地よいんですね。

 とはいっても、日常を切り取った、静かな作品。
 たとえば群ようこのような、事象を切り取った作品ではありません。
 切り口が鮮やか、というわけでもないんです。
 とにかく、空気感。
 ふわっと包まれる、作品の空気がすばらしいんです。
 しっとりと、ちょっと湿気や香りを含んだ空気。
 どの作品も、そんな空気感に包まれます。
 そして、なんだかちょっと幸せな・・・。
 懐かしいような・・・。
 切ないような・・・。
哀しいような・・・。

 梅雨の昼下がり、ぼんやりと読む読書にはぴったり。
 こういう作品、大好きです。