Magoの旅と音楽と

旅と音楽について書いています。

「私が語り始めた彼は」三浦しをん(新潮文庫)

 妻子がありながら、愛人関係を噂される大学教授村川融。
 彼の研究室に勤める助手三崎は、彼の妻を訪ねるのだが。

 なんだか、すっきりしないお話です。
 村川は妻子を捨て、子連れの愛人と新たな所帯を持ちます。
 これが骨子なのですが、物語の本筋ではありません。
 村川をめぐる人物相関にある男性の目を通して、人間関係に迫るのが本作品。

 連作短編集の形をとりながら、6編からなります。
 たとえば、研究室の助手。
 たとえば、愛人の夫。
 たとえば、捨てられた側の娘のフィアンセ。
 時代も前後し、一筋縄ではつながりません。
 しかも、当の村川融は姿を現さないのです。

 どろどろした人間関係。
 からめとられてゆく感覚。
 ちょっと鬱陶しいまでの設定で、はっきりいってちょっとげんなり。
 でも、それを独特の文体でつなぎ、最後まで読ませてくれます。

 現実世界では、こんなことに巻き込まれたくはないです。
 現実世界で、こんなことに巻き込まれていない人のおとぎ話。
 エンターテイメントなのかもしれません。

 ちょっと、疲れました。
 ふぅ。