Magoの旅と音楽と

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「ハッピー・リタイアメント」浅田次郎(幻冬舎文庫)

 元財務官僚の樋口と元自衛官の大友の配属先は、ほとんど幽霊機関の「全国中小企業振興会」。
 天下りの受け皿としてのみ存在する大義名分は・・・。

 本当にありそうなお話です。
 まあニュースの中でしか知らないわけですが。
 もともとは機能していた機関が形骸化して、席だけ残っている。
 このお話で出てくるのは「全国中小企業振興会」。
 もともとは中小企業への貸付などを行なっていたけど、分室が形骸化して残っている様子です。
 本体は霞が関でちゃんと機能しているようで、この分室の存在はますます霞の中にあります。
 いかにも。

 そういえば街を歩くと、いろいろな「庁舎」が目につきます。
 ●●センターとか(公財)▲▲振興協会とか。
 もっともらしい名前がついており、もっともらしい理由付けもあるでしょう。
 今も必要か、今も機能しているかは、一般人には確かにわかりません。
 勝間和代さんも解説で触れられていますが、おそらく議員さんにもわかるまい。
 ましてやパフォーマンス、感情論の「事業仕分け」で見きれるわけがありません。
 行政評価やオンブズマンなど、官民にわたっていろいろな試みがありますが、難しいようですね。
 それでも最近は合併や組織の統合で、あちらこちらに公的機関の廃墟がみられます。
 どうやら大局的な兵糧攻めが効果的なようです。

 さて、作品の内容は小難しくなく、エンターテイメントに徹しています。
 愚直な自衛官と、組織の中で生き抜いてきた財務官僚。
 そして金融機関上がりのお局様と謎の老女。
 謎の老女は、いかにも浅田作品のキャラですが。
 人物が、いきいきしています。
 なんだか楽しそうなんですよね。

 ドラマになりそう。
 面白かった~。