Magoの旅と音楽と

旅と音楽について書いています。

「ぶたぶたさん」矢崎存美(光文社文庫)

 執事が出迎えてくれる「執事喫茶」。
 そこで出会った執事、山崎さんはちょっと変わった風貌をしていた。

 桜色のぶたのぬいぐるみ。
 でも、中身は心優しい中年男性、山崎さん。

 ファンタジーです。
 徹頭徹尾、ファンタジー
 小さなぶたのぬいぐるみが、動いてしゃべります。
 これについていけない人は、この作品には向きません。

 山崎さんは、時に執事。
 カウンセラー、ボランティア、パティシエ、父親。
 いろいろな側面を持つ、普通の中年男性です。
 そして、常に紳士で、皆の信頼を集めています。

 作品は全部で11編。
 いわば連作短編集です。
 全編、全く違ったシチュエーションで、主人公も変わります。
 共通しているのは、主人公だけが山崎さんの風貌を受け入れられていないこと。
 主人公以外の人は、みんな山崎さんを自然に受け入れています。
 あと、読者も、経緯を知らされないまま、宙ぶらりんに話が進みます。
 最後まで、謎は明かされないまま。
 もしかすると、作品世界にとって、山崎さんの風貌は謎ですらないのかもしれません。

 それぞれハートウォーミングな小品です。
 電車のお供に。