Magoの旅と音楽と

旅と音楽について書いています。

「くまちゃん」角田光代(新潮文庫)

 苑子は、花見で同席した男性と付き合い始めた。
 彼は芸術家気取りで、奇妙な熊の絵の入った服を着ていた。

 7編からなる連作短編集です。
 触れ込みは「ふられ小説」。
 男女がひっつき、一人がふられる。
 その人の前後譚が、次の章で語られる。
 そんな連綿と連なる、人と人。
 クルッと回って、一回り。
 HIVの広告のような・・・。

 流されている人と、目標に向かって進んでいる人。
 様々な人が描かれます。
 でも、どの人も結構アグレッシブ。
 捨鉢な人、あるいは状況というものは描かれません。
 そして、淡々とした日常も。
 まあ、平凡な波風のない日々では、小説になりませんから。

 どのキャラも、なかなかに魅力的。
 だれもが一生懸命生きています。
 重大でかつ些細な決断を下しながら、日々をあがいている感じ。

 「アイドル」の章で描かれるのは、男女はパンクロックバンドのボーカル男性と、グルーピー女性。
 でも、この章に出てくる、ボーカル男性の元に通う幼なじみの人妻。
 こいつが曲者。
 とても気になります。
 この人妻の前後譚がありません。
 う~ん、描いてほしい!

 駆け引きや、行きずりの恋。
 どちらもぼくは経験したことがありません。
 幸せなのか、それとも、人生の妙味を避けてきたのか。

 こういう作品、好きです。
 恋愛小説好きの方に、オススメ。