Magoの旅と音楽と

旅と音楽について書いています。

「マザコン」角田光代(集英社文庫)

 マザコンと言われた。心外だった。
 母親離れができていないのは、妻のほうだと思うのだが。

 全部で8篇からなる短篇集。

 誰にでも母親はいます。
 存命であるか、あるいは付き合いがあるかは別ですが。

 多くの場合、その影響は計り知れないほど大きいものです。
 この作品では、おとなになった主人公と母親との関係性が描かれます。
 主人公は女性であったり、男性であったり。

 女性は自身も母であったりする場合もあるので、真似したりすることも多いでしょう。
 あるいは反面教師ということも考えられます。
 でも、似ている、似ていないが常に付いて回る、母という存在。
 ぼくも、妹の姿に母を見つけますし、姪の中に妹の姿を見つけます。
 しかし、男性の中にその母親の姿は見いだせるものなのでしょうか。
 そんなジレンマが、マザコンという表現の正体なのかもしれません。

 静かで切ない作品たちです。