Magoの旅と音楽と

旅と音楽について書いています。

「ニシノユキヒコの恋と冒険」川上弘美(新潮文庫)

 清潔で、爽やかで、気がつけば女性の心に入り込んでいるニシノユキヒコ。
 ニシノユキヒコをめぐる恋物語、10編。

 ぼくは、音楽が好きです。
 かなり片寄って聴いていますが、好きです。
 初対面に近い人に、必ず訊ねることが2つあります。
 どこの出身かとどんな音楽が好きか。
 たいていこの2つの話題で、話は弾むものです。

 「音楽?好きですよ。う~ん、何でも聴きますよ。」なんていうかたもいらっしゃいます。
 でも、ぼくの経験上、こういう人はさほど音楽が好きではない人(ただひとりを除いて)。
 キライじゃないけど、マニアではないということ。

 ニシノユキヒコは、いろいろな女性と、いろいろなつきあいをしています。
 結局ひとりに腰を落ち着けることなく。
 もちろん女たらし、女好き。
 でも、実際には女性が好きなのかどうか、分からないような気がしました。

 どうして僕はきちんとひとを愛せないんだろう

 とっかえひっかえの女遍歴は、結局のところ心の隙間を埋めようとしているだけなのかもしれません。
 また、隙間を埋めることができなかった女性たちは、喪失感に苛まれているようです。

 現実世界でも同じなのかも。
 快楽だけに走る。
 遊ぶだけ。
 実は恋に恋する、女子中学生と、さほど変わらない精神構造なのでしょうか。

 ひとりの男性をめぐる、女性視点の連作短編集。
 なんだか楽しく読めました。