Magoの旅と音楽と

旅と音楽について書いています。

「その日のまえに」重松清(文春文庫)

 妻の和美の身体は、ガンに蝕まれていた。
 「その日」に向かう家族は・・・。

 重松清の連作短編集です。
 実は、連作であるということを知らずに読み始めてしまいました。
 もちろん「その日のまえに」「その日」「その日のあとで」が連作なのは、表題からも分かりましたが。
 ですから、途中で他の編の設定が絡んできたときには鳥肌が立つ思いでした。
 というのも、この短編集のテーマは「死」。
 幼い頃の級友の死。
 突然死で遺された家族の日々。
 死への歩を進めるガンとの戦いの日々。
 死ぬということは、人と人との関係性が、完全に一方通行に変わることですよね。
 故人への思いは、もう、常に一方通行。
 しかし、連作短編集である本作は、ここに意外な関係性を鮮やかに持ち込みます。
 あたりまえですが、生きるということは、関係を持つということなのですね。
 そして、死んで後も、遺された者同士の関係性は広がるのかもしれません。

 さて、ここで重大な注意点があります。
 今、闘病をなさっている家族や親しいご友人をお持ちの方。
 大切な人を亡くされて間もない方。
 そして、闘病中の方。
 読まない方がいいです!
 結構リアルです。
 ただの読み物として読み進められる方は、シアワセです。
 途中、何度この本を投げ出そうとしたことか。
 それと、この記事の以下も読まない方がいいです。

 淡々と進む闘病の日々。
 ちょっとしたことが引っかかる、心のささくれ。
 連帯感、充足感、焦燥感。
 不安、絶望。
 一喜一憂。
 父を送り出した日々のことを思い出しながら読みました。

 突然死も辛い。
 死期が分かっているカウントダウンのような、ガンも辛い。
 本作のガン患者の方は、みなさんきっちりと後かたづけをしていらっしゃいます。
 でも、ガンって、死期が分かっても必ずしも、そんなキレイには片づかないもののようです。
 結構リアルにそのあたりの事情が描かれています。
 読み物として、読み飛ばせる方はお読みください。

 映画化されるようです。
 監督は大林宣彦
 どうなるのでしょうね。
 青空をふわふわ飛んで手を振るような演出だけは、ぜひやめていただきたい!