Magoの旅と音楽と

旅と音楽について書いています。

「非・バランス」魚住直子(講談社文庫)

 1つ、クールに生きる。
 2つ、友だちはつくらない。
 中学生になるとき、そう心に決め込んだ。

 中学生って難しいんですよね。
 オトナ(ホント?)なぼくとしては、どう扱えばいいか・・・。
 もちろん、中学生本人も自分を扱いかねていることを、中学生時代を経験してきたぼくは知っています。
 コドモでもなくて、オトナでもなくて。
 理屈は通らないけど、無鉄砲な時期。
 自分の置かれている立場に気付く時期。
 「自我の確立」なんていうコトバで表現されますが、その後の人生の本当のスタート地点。
 不思議な時期です。

 中学生~高校生の頃、20代後半の人って、とてもオトナに見えました。
 でも、20代後半になったとき、そんなにオトナでもないことを、身をもって知りました。
 30代後半の今、20代後半の頃と今と何も変わらない、と思いこもうとしているイタイ自分がいます。

 さて、物語の主人公は女子中学生。
 小学校高学年の時にイジメにあっています。
 中学生になるときに引っ越し、過去とはつながりが切れたかのように見えます。
 でも、本人は物理的な位置とは関係なく、心にため込んだ鬱積と闘います。
 そして出会う、かっこいいオトナ。
 初めて自分を対等に扱ってくれるオトナに出会います。
 そして、同世代の他人から、自分がどう見えているのかを知ってゆく。

 オトナも悩んでいます。
 この物語のキー、「ハヤシモト サラ」も、悩める女性。
 実は彼女も、自己実現という成長段階で足踏みをしています。

 オトナの弱さに気付いたときが、本当にオトナになったときなのかな。
 ぼくはそう思っています。
 いいオトナとの出会い。
 先生と生徒でも親と子でもない、純粋な人と人との関係が、成長を後押しするのでしょう。
 ちょっとイタイようなエピソードもまじえ、悩む中学生たちがみずみずしく描かれます。

 児童文学というジャンルに分けられる作品のようです。
 大きめの活字、薄い目の文庫。
 とにかく読みやすいので、ぜひ見かけたかたは読んでみてください。
 忘れていた何かが見つかるかも。

 中学生と、見失っているオトナに。
 オススメ。