Magoの旅と音楽と

旅と音楽について書いています。

「県庁おもてなし課」有川浩(角川文庫)

 掛水は、高知県の観光担当部局、おもてなし課のホープ
 地元出身の作家に企画の協力依頼を求めるが、厳しい反応が帰ってきて・・・。

 映画にもなりましたね。
 「図書館戦争」と同時に上映されていて、いまや有川浩は日本を代表する作家さんですね。

 お役所が舞台のこの作品。
 描く範囲やテーマは広いのですが、なぜか狭い。
 登場人物が絞られていて、わかりやすいとは思うのですが。

 お役所仕事。
 いい意味ではありませんよね。
 でも、必ずしもお役所がお役所仕事から抜け出す必要もないのかもしれません。
 それが求められていることでもあったのでしょうから。
 この作品では、そんな一面も描かれています。
 非効率であることを義務付けられていると言っても過言ではない。すべての業務にマニュアルがあり、即応性を求められる事柄も手続き論で停滞する。それは、手続きで縛らなくては信用できないという前提を背負わされているからだ。
 有川さんによれば「役人なんて信用できない」ということと「非効率だ」ということは表裏一体なのですね。
 役所には、そもそも、利益などというはっきりした目標があるわけではありません。
 公益というコトバで表わされるのは、とても曖昧な個人の満足の集合。

 「民間の感覚なら」なんていう表現が、作中でも多々出てきます。
 はっきりいいましょう。
 「民間の感覚なら、そんなところには出店しない!」
 でも、役所は場所に縛られているのです。
 スタバは鳥取県に出店しなくても、鳥取県庁は大阪に引っ越すわけにはいかないのです。
 一番の違いは、おそらくそういうことですよね。

 地域ブランド戦略などは、役所にしかできない仕事だと思います。
 役所にできること。
 民間企業にできること。
 お互いを補いあって、より高みを目指す。
 そんなことが出来ればいいのですが。
 なかなかそうはいきません。
 実際には、「誰がやってもつまずくこと」が山積しているから。

 まあ、無駄な施策にはお金を使ってほしくないものです。
 ぼくは、大きな範囲の小さな政府が望みです。
 でも、そうは思わない人もいるのが、政治と行政の難しいところ。
 みんながそう思うわけではない。
 そんなことを思いながら読みました。

 あ、作品は楽しく、さわやかな青春群像です。
 掛水くんには、お役所に染まらずにこの先も頑張ってほしいな。
 高知県に行ってみたくなりました。