Magoの旅と音楽と

旅と音楽について書いています。

「珈琲屋の人々」池永陽(双葉文庫)

 バブル期の地上げにも耐えた、都内に残る小さな商店街。
 商店街で珈琲店を営む行介は、殺人の罪で服役したことがあったのだが。

 ハートウォーミングな連作短編集。
 7篇からなります。

 主人公行介は、父親から受け継いだ珈琲屋のマスター。
 実直で寡黙。
 少し前なら、高倉健のイメージなのでしょうか。
 いかにも映像化されそうな雰囲気です。

 珈琲屋に出入りするお客。
 商店街の人々。
 被害者の遺族。
 そして、幼なじみ。
 みんなが何かしら、心に傷を負っています。

 悪者は、悪者なんですね。
 どうすればいいのでしょう。
 まあ、勢いに任せるのがいいとは思えません。
 でも、あの時代、日本中が狂っていたのかもしれません。

 最近、どこかバブルに戻りたいなんていう風潮がありますね。
 景気がいいことは、良いことだと思います。
 でも、バブルや地に足つかないのが、良いことだとは思いません。
 負った傷、狂気の記憶は、消えません。
 ぼくは堅実でいいです。
 もしかすると、貨幣経済の仕組みそのものがバブルともいえるのかもしれません。

 心温まるストーリー。
 オススメ。