Magoの旅と音楽と

旅と音楽について書いています。

「しゃべれども しゃべれども」佐藤多佳子(新潮文庫)

 主人公は今昔亭三つ葉二ツ目の若手落語家。
 もちろん話し好きの話し上手。
 吃音が元で自信をなくしている従兄弟にせがまれ、落語を教えることになるのだが・・・。

 何だか爽やかな作品です。

 自信をなくしていたり、人生にぶち当たったり。
 問題を抱えた男女が、主人公の元へ集まります。

 みんな口べたが原因で、壁に当たっていると思いこんでいるのですが。
 実は、主人公だって悩んでいます。
 みんな、悩んでいるんですね。

 誰だって悩んでいるし、克服も容易ではありません。
 それが何だかリアルです。
 じわじわとボディーブローのように効いてくる、人物の描写が秀逸。
 ムリのない設定なんです。
 しかも、どの人も愛すべき面白さ。

 悪者がいなくて、みんなを応援しちゃいます。
 この、性根からの悪者がいない点。
 落語と共通していますね。

 現代の小説の姿を借りた落語なのかも。
 イイ作品です。