Magoの旅と音楽と

旅と音楽について書いています。

「少女A」西田俊也(徳間文庫)

 主人公アイダ・ナオ(♂)は、崖っぷちの高校受験生。
 「とりあえず、安心したいから」と受験したのは、お嬢様学校として有名な女子校。

 いい感じです。
 スピード感と、何だかみずみずしさがあります。

 主人公アイダ・ナオは男子です。
 GIDMtF、TSでもTGでもない・・・つまり、性同一性障害でもなければ、女装子でもありません。
 「突然、朝起きたら女に」もなりません。
 普通の華奢な男の子。
 華奢な身体と、長髪を活かして(?)女子校を受験しちゃいます。
 それも「女の子がいっぱいいて、楽しそうだから。」というスケベ丸出しで。
 このスケベ丸出し状態の独白が、楽しいんですね。
 妙にリアルで、妙に懐かしくて。
 内申書や戸籍抄本を改竄するのがリアルかどうかは別ですが。
 でも、いかにも、さもありなん。
 男子高校生なんて、スケベの塊のようなものです。
 そのスケベなエネルギーと窮地を脱しようとする火事場の馬鹿力で、女子校へ通ってしまいます。

 身体の変化への戸惑い。
 友人との成長の差への戸惑い。
 性差の戸惑い。
 そういうこともあったなぁ、と。
 そういえば、色々アコガレもありました。

 惜しむらくは、学園生活のイベントが少ないこと。
 使い捨てにされるキャラクタが多いこと。
 主人公たちが生き急いでいるように見えること。
 でも、その割り切りが「やおい」になりがちなこの手の他の小説と、一線を画します。
 これぞプロの作品なのでしょう。

 高校1年生の時、ぼくは何をしていたっけ?
 素敵な恋をしていたかな・・・。
 あのこは、今頃どうしているのだろう・・・。

 ぼくは、あまり後ろを振り返る人間ではありません。
 でも、この本を読んで、高校を卒業してから初めて思いました。
 「学生に戻ってもイイかも!」

 初の文庫化ですが、少々古い作品です。
 ケータイもルーズソックスも、援交も出てきません。
 とにかく楽しくて、懐かしい青春群像。
 何かなくしたものを想い出したかも。
 オススメ!