Magoの旅と音楽と

旅と音楽について書いています。

「恋はさじ加減」平安寿子(新潮文庫)

 タマネギがどうにも苦手な志奈は、家具商のバイヤー。
 山村でナチュラルテイストの家具を買い付けるべく、足を運ぶ。
 しかし、そこで供されたのはオーガニックがウリのタマネギをふんだんに使ったハヤシライスだった。

 このかたの作品は初めて読みました。
 食べ物に一癖ある人物が出てくる短編集です。
 さほど厚くない文庫本に6編が収められています。

 出だしから、ゲテモノのハナシです。
 ハマグリの焼き物を食べた店で供される前菜は、ヤモリ。
 これを男女が初デートで食卓を囲みます。

 ゲテモノ、ポテトサラダ、タマネギ、カレーうどん、バターごはん、梅酢。
 これらが各編を彩る味となって登場します。
 食のテーマはいろいろ。
 でも、描かれるのは男女の愛。
 それも、主に30台の独身女性。
 レシピは書かれておりません。

 三十過ぎて未婚の女性は負け犬と呼ばれる世の中だが、結婚願望がない路子はそんな風潮、へのカッパである。シングルでいるのを恥ずかしいとも思ってない。
 だって、恋愛したいんだもん。いっぱい、いっぱい、したいんだもん。恋愛より他にしたいことなんて、もしかしたらないかもしれない。そのくらい、恋愛願望に燃えているのだ。
 (一番好きなもの)

 ちょっとクセのある男性と、仕事や食にワガママな女性の組み合わせが目につきます。
 けっこう男性はあれこれ手を尽くしているように見受けられるのですが、主人公たちはこともなげにあしらってしまいます。
 思わず「何様のつもりや!」と、主人公にツッコミを入れること数回。
 クセがあって面白い男性に対して、なんの特徴もない下品な女がわめいています。
 男性からしたら、「こんな女こっちから願い下げ」な主人公たちです。
 あきらかに「さじ加減」間違っているのですが・・・。

 と、そんな作品もまた面白い。
 女性向けなんでしょうね。
 先の「ゆらゆら橋から」が、オジサン向けなら、この作品は負け犬向けでしょうか。

 こんなのもいいかも。
 バターごはん、食べてみたくなりました。