Magoの旅と音楽と

旅と音楽について書いています。

「ヤッさん」原宏一(双葉文庫)

 銀座でホームレスに堕ちたタカオ。
 ある日、突然男に起こされ、ついてくるように命じられた。
 その男は、食の達人、ヤッさんだった。

 若いホームレスが中年ホームレスに拾われ、更正するまでの物語です。
 早いテンポと魅力的なキャラが、物語をどんどん進めていきます。

 ホームレスとはいっても、独自の哲学を持つヤッさん。
 身奇麗にし、体力を保持するトレーニングも怠らない。
 人とのつながりを何よりも大事にし、よく観察、よく与える。
 単に、家を持たないだけ。
 本当のところは、食材のコーディネーターなんですね。

 ところで、どうして「ホームレス」というのでしょう。
 もちろんホーム(home)がないから、ホームレスなんですが。
 英語でもホームレス(homelessness)なんですね。
 でも、どうやらヤッさんとタカオはhouse-lessです。
 home、つまり帰るべきところは、ある。
 ないのは家屋、住居だけなんです。

 バカラックの曲に、「a house is not a home」という作品があります。
 その歌詞は、こんな感じ。
 roomはroomでしかないし
 roomはhouseではなく
 houseはhomeじゃないのよ
 このhouseをhomeに戻して
 私を愛して
 もちろん意訳で、要約です。

 スキッと爽快。
 ちょっとほろ苦。
 大変愉快。
 主人公、タカオの成長物語でもあります。

 映像化されそうな雰囲気。
 続編が出たら、もちろん買います。
 オススメ!