Magoの旅と音楽と

旅と音楽について書いています。

「唇に小さな春を」稲葉真弓(小学館文庫)

 田んぼのあぜに足を取られそうになりながら、ともかく走る。
 ばあちゃんが死んだという電話があったのは、ちょうど小学校から帰ったとき。
 家を出る前、台所のテーブルにあったのをとっさにズボンのポケットに入れたのは・・・。

 色に関わるお話が詰まっています。
 18の短編と、さらに掌編3編。
 もちろん、どの作品も短いのです。
 情景と余韻を楽しむ作品たち。
 そして、ちょっとノスタルジー

 色って、普段から目に入っているはずなんですが、特別に気にすることもなく過ごしています。
 でも、はっとさせられる色ってありますね。
 案外記憶と結びついていたりもするものです。

 子どもの頃、日暮れまで遊んだ時の黄金色の夕日。
 新緑の頃。
 竹やぶの緑。
 池の青。
 毒々しいジョロウグモコガネグモ
 イモリのお腹。
 オイカワの婚姻色。
 夏の空と入道雲
 懐かしいものには、色やにおいがあるのかもしれません。

 作品は、ノスタルジーだけではありません。
 都会の男女であったり、幽体離脱(?)だったり。
 でも、なんだか優しい。
 どこか暖かい。
 そんな作品集です。