Magoの旅と音楽と

旅と音楽について書いています。

「少年時代」池永陽(双葉文庫)

 舞台は昭和四十年代初めの郡上八幡
 新橋から飛び込むことが、大人の証とされるこの街で、飛び込めずにいる中学1年生の良平。

 ぼくは少年ものが大好きです。
 映画でも、小説でも。
 独特の共通したノスタルジーを持って描かれる作品が多くあります。

 「少年時代」という題名。
 ストレートですね。
 映画でも「少年時代」という作品がありました。
 あちらも小説が原作ですが、原題は「長い道」でしたか。

イメージ 1

 新橋から、水面を覗いたようすです。
 結構な高さがありますが、うまく写りません。

 この作品のノスタルジーは、他の少年ものとは一線を画します。
 「切ない」とも違う、何かなんですね。
 しいていえば、「やるせない」と表現すべきでしょうか。

 様々なものを得て、人は子どもから大人になりますよね。
 経験であったり、人のつながりであったり。
 でも同時に、失うもの、切り捨てるものもあるのでしょう。
 それは、あきらめであったり、自分の領分を知ることであったり。

 でも、この作品中で主人公は、どんどん失っていきます。
 庇護であったり、子ども同士のつながりであったり。
 大人への落胆、失望。
 そしてエゴが見えてきたり。
 その代償として、自分自身、そして自信を得るのですが。

 作品の象徴として描かれる、橋からの飛び込み。
 風習が示すとおり、飛び込みはまさに大人社会への切符。
 みごと飛び込みを果たし、心の澱をはらすのですが。
 主人公にはどうやらつらい将来が待っていそうです。

 ところで、解説が最悪です。
 解説から読む習慣のある方、ご注意ください。
 あらすじというか、すべてネタバレしています。
 しかも「解説」なのに、ほとんど「あらすじ」。

 いい作品です。
 この作品を読んで、長良川鉄道郡上八幡に足を運んでください。
 とても美しい街です。