Magoの旅と音楽と

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「都市伝説セピア」朱川湊人(文春文庫)

 「同じ鳴き真似を返さないと、即座に殺される。」
 都市伝説のフクロウ男になるために、あらゆる手段を講じるのだった。

 なんだって、こんな表題がついているんでしょうね。
 「都市伝説」というワードに引っかかって、高校生が買うとでも。
 買いそうだけど。

 この作品が朱川湊人さんのデビュー作だそうです。
 5編を擁する短編集。
 たしかに、今の作品と比べれば荒削り。
 でも、人情奇譚(?)は、鮮やかにスタートを切っています。
 「もうひとひねり」
 このかたの作品には、「もうひとひねり」が込められていて、とても感心させられます。

 とはいえ、ぼくがこの方の作品で読みたいのは「フクロウ男」のような作品ではありません。
 まあ、怪奇小説もアリなのでしょうが、求めているのはもっと人情話に近いもの。
 その点、「昨日公園」は鮮やかです。
 この作品を読めば、ぼくならすぐファンになっちゃいます。

 ちょっと時間の流れが乱れている公園を軸に、物語が進みます。
 以前に読んだ「かたみ歌」につながるものがあるように思います。
 ちょっと不思議な「こと」が、当然のように物語の一要素として登場します。
 不思議な「人」ではないのが、このかたの物語を引き立てているのかと。
 誰にでも起こりうるような、ちょっと懐かしいような。
 そんな要素として「不思議」が物語に介在します。

 朱川湊人さんのファンはもちろん、そうでない方にも。
 オススメ。
 あ、朱川湊人さん初体験のかたには「かたみ歌」をオススメします。