Magoの旅と音楽と

旅と音楽について書いています。

「トゥモロー・ワールド」を観ました

■劇場(字幕)

 2027年、世界中で子供が産まれなくなってから18年が経過していた。
 鎖国政策で何とか政府の形を保っているイギリス国内は、入国管理政策もレジスタンスのテロも激化。
 官僚のシドは、レジスタンス「フィッシュ」に参加する別れた妻から「通行証」の入手を頼まれる。

 どうして「トゥモロー・ワールド」なんでしょう?
 原題は「CHILDREN OF MEN」です。
 最悪な邦題ですね。
 訳本は「人類の子供たち」として出版されているようです。
 どうして「人類の子供たち」のままじゃいけなかったんでしょう。

 さて、内容は・・・。
 すごいです。
 とにかくすごい緊張感。
 切り裂くような音楽。
 冒頭から続く暴力シーンの連続。
 突然の爆発、発砲、悲鳴。

 街の荒廃。
 未来のない世界。
 廃墟になって久しい小学校。
 政府が配給する安楽死に導く毒薬。
 今とほとんど変わらないテクノロジーに、全く違う価値観が蔓延しています。
 たとえばエコロジー、芸術。
 未来に残す世界はあっても、未来がなければ残すべきものなんてないんですね。

 実社会でも生殖能力の低下、ずっといわれていますね。
 突き詰めれば、こうなるのでしょうか?
 ぼくは、もっとセックスに関する価値観が変わると思うのですが、いかがでしょう。
 たとえば妊娠可能年齢の女性は毎月、強制的に受精を試みられるとか。
 もっと露骨な性表現がファッションや行動に表れるとか。

 柴田昌弘の「ラブ・シンクロイド」というコミック(ぜひ映画化してほしい!)では、女しか生まれなくなった世界が描かれていまます。バイオテクノロジーがかなり進化して、クローンで世代をつなぎ、急場をしのいでいます。地球ではないという設定ですが。
 対して、この「トゥモロー・ワールド」は為すすべもなく、人類は滅亡へと駆け足です。
 もしこんな事態に陥ったら、本当に人類には生き残る方法はないのでしょうか。
 なぜか本気で心配です。
 身の回りでも、不妊の声はよく聞きます。

 さて、この映画、映像が素晴らしい。
 どうやって作ったのかという映像。
 「28日後」といい、この映画といい。
 最近の、荒廃した世界を描いた作品は、イギリス映画が素晴らしいできを見せていますね。
 緊迫した空気に増して、ハンドカメラでの撮影。
 血が飛び散り、建物が崩れ、ものすごい埃がたちます。
 飛び散った血はカメラのレンズにも付着しますが、そのまま長尺の戦闘シーンをとり続けます。
 酔います。
 ちょっと気分が悪くなりました。

 「アイランド」のようなすかっとした未来観ではありません。
 作ったのがハリウッドでなくてよかったと思います。
 シナリオもこれでいいと思います。
 みんな必死で、正義も悪もないのが妙にリアルです。
 もう、どうしようもない、あまりに未来のない描き方ですが、最後に希望の光。
 なぜか涙が出ました。

 まちがっても、妊婦さんは観ないほうがいいです。
 カップルにはいいかも。
 あまり宣伝されていませんが、覚悟して観てください。
 ヤワなSFに飽き飽きの方、ぜひ観てください。
 とてもいい映画、だと思います。
 どなたにでもオススメ、というわけではありませんが、すごくオススメです。
 近年観た映画の中でも、かなりの高得点です。
 観ようという方、ぜひ映画館で。